自民党の河井案里氏(参院広島)が初当選した昨年7月の参院選の公示前、案里氏と夫の克行前法相(衆院広島3区)が支部長を務める二つの自民党支部に、党本部から計1億5千万円の資金が入っていたことが22日、分かった。広島選挙区で同様に党公認を得て議席を争い、落選した溝手顕正氏の10倍に当たる。金額に法的な制限はないが、党関係者からは「異常な額だ」との指摘が出ている。
▽資金肩入れ浮き彫り
自民党は広島選挙区で改選2議席の独占へ21年ぶりに2人を立て、全国屈指の激戦区となった。案里氏の事務所には公示前から安倍晋三首相(党総裁)の複数の秘書が出入りし、菅義偉官房長官が繰り返し応援に駆け付けるなど、政権中枢や党幹部が当選を後押しした。それに加えて資金面でも手厚く肩入れしていた実態が浮かび上がった。
関係者によると1億5千万円は、昨年4月から参院選公示前までの間、二つの党支部の口座に振り込まれた。克行氏が支部長の党広島県第三選挙区支部と、案里氏の党県参院選挙区第七支部で、1回の入金額が4500万円に達したケースもあったという。
溝手氏が支部長の党県参院選挙区第二支部は、公示前に党本部から受けた資金は1500万円だった。内訳は公認料500万円、選挙対策費1千万円という。広島選挙区は党県連の主流派が岸田派重鎮の溝手氏を支援し、官邸や党本部が案里氏を全面的に支える構図となっており、それらが党本部からの資金の格差につながった可能性がある。
案里氏の陣営は公示前の政治活動として、案里氏と菅氏の対談内容などを紹介する大量の印刷物を県内各地へ送ったり、経歴などを記した顔写真入りのカードを街頭で大量に配ったりした。案里氏と安倍首相が並ぶポスターもあちこちに張られた。溝手氏など他陣営からは、これらの活動にかかる多額の資金の出どころをいぶかる声が出ていた。
県選管によると政治資金規正法では、政党から政党支部を含む政治団体への資金の移動は「寄付」として扱われ、年間の上限額はない。自民党幹事長室は、中国新聞の取材に「政治資金は法令に従い適正に処理している。昨年の政治資金については、今年提出する収支報告書などを見てほしい」とコメントした。
河井夫妻の事務所はともに「政治資金は、法令に従い適正に処理している」などと回答した。
広島選挙区を巡っては、案里氏の陣営が車上運動員に対し、公選法の上限の2倍の報酬を払った疑いがある。広島地検は河井夫妻の自宅や地元事務所などを家宅捜索し、公設秘書たちの任意聴取を連日、進める。陣営が複数のスタッフに違法な報酬を払った疑惑や、案里氏たちが党県議に現金を持参した証言もある。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース